骸くん。






言ったはずだよ







ここからは逃げられないってね…











だから早く僕のこと見てよ





















「はぁ!?

ボンゴレの情報も聞き出す前に記憶消したんですか?」




「うん♪

だって骸クンったら"殺せ"しかいわないんだもん。」







折角ボンゴレの守護者・六道骸を捕まえることができたというのに

ボンゴレの情報を聞き出す前に記憶を消したという白蘭の言葉。



忠実な部下・入江正一は持っていた書類を床に散らしそうになっていた。








「しかし…!」









やっと掴みかけたものを、そんなあっけなく諦めていいものだろうか…









「もし、この先ずーっと聞こうとボク達が粘っても、彼は口をわらないよ。」







フフッと軽く笑う白蘭。

しかし、何かを企んでいるその表情に、正一は息を飲んだ。





「六道骸は今どこにいるんですか?」


「ん?多分ボクの部屋にいると思うよ。チェルベッロくん達が運んでくれていたらね。」






そう言いながらテーブルに用意されているマシュマロをひとつ取り、口に入れた。

納得のいかない顔をしている正一に白蘭は手を止め、正一に視線を向けた。





「何なら見に行く?」


「………は?」


「骸クンのトコロ。」





にっこりと笑んでいる白蘭に戸惑いながらも正一はうなづいた。

書類を近くの机に置き、白蘭と共に骸が眠る部屋へと足を運んだ。







「ん、まだ寝ているみたいだね。」






クスクスと笑いながらベッドの端に座り、骸の頬を撫でていく。

さらさらとした長い髪を指に絡めて遊んでいる。





「……………んっ……」




眉間に皺をよせ、ゆっくりと瞼を開けていく。

焦点が合っていないのだろう、骸は何も言わずにただただ白蘭を見ていた。






「調子はどお?骸君v」


「…………白、らん……」





体を起して辺りを見回した。

真っ白な広い部屋に、ドア付近でポツン、と立っている正一を見つけて口に出した。






「入江…隊長」


「!……(え、何……記憶消しただけじゃないの!?改ざんなんて聞いてない!)」


「迷惑…掛けてしまいましたね。……これ、いつ負傷したんでしょうか……」





そう言って自分の片目に手をあてた。

考えを巡らせてもその答えが出てくることはない。





「骸クン、僕を庇って怪我したんだよ、ソレ。覚えてないかもしれないけど」





嘘とは知らずに骸は「そうですか…」と納得したように視線を落とした。

いつ治るかわからない目を気にしても仕方がなく、白蘭は骸の頭を撫でて立ち上がった。







「回復するまでゆっくり休んでてね」


「ありがとうございます」





バイバイ、と手を振って部屋を去って行った白蘭に軽く微笑んだ。

パタリ、閉まったドアを見て、はぁ…とため息つき、窓から見える空に視線を移した

































「ちょ、白蘭様!聞いてませんよ、六道骸の記憶を改ざんしたなんて!」


「えー、そうだっけ♪」




廊下を歩く白蘭と、その隣を歩く正一。

骸が目を覚ましてご機嫌な白蘭に対し、正一は怒っていた。





「そうです!というか何なんですか、"入江隊長"って!!」


「そんなに怒らないでよ正チャン。まあ、正チャンの下についてることにしてるから、よろしくね」


「あ、はい…わかりました。
…………じゃないですよ!!六道骸が僕の部下だなんて考えられません!」


「クスッ 大丈夫大丈夫♪正チャンは適当に"骸君"っていえば不自然じゃないし平気平気。」


「……はぁ。(全く、勝手なんだから……)」







見る限りウキウキ気分の白蘭を先に、正一は立ち止まって窓の外の空をみて溜息をこぼした。







「正チャーン!」


「はいはい。今行きますよ。」

















――ボンゴレ――





「骸から連絡は?」




執務室で淡々と話しているのはボンゴレ10代目・沢田綱吉だ。

骸が消え、連絡が数日が経っていた。



緊急というのもあり、守護者が集合した。







「未だ、ありません。」






綱吉の隣に立つ男・獄寺隼人は眉間に皺をよせながら告げた。

守護者全員が沈黙している中、再び綱吉は口を開いた。






「……ねぇ、クローム。」


「はい、ボス……。」


「クロームは、骸に呼びかけているって言ってたね。……どお?」


「………骸様からは反応がないの。いくら呼びかけても…まるで、そこにいないような……」


「そう。」


「骸が殺された…とかはねーよな?」






日本刀を腰に差している山本が、気まずそうに綱吉に問いかけた。







「君、バカ?」







壁に寄り掛かっている雲雀は腕を組み、山本に視線を向けた。








「あいつが死んだなら、クローム髑髏は死んでる。」


「だよな。じゃ、どっかにいるんだよな。」






綱吉は溜息一つ零し、全員に目を向けた。








「引き続き、骸の捜索を。」







その言葉と同時に全員は執務室から去っていき、この部屋には綱吉の他に獄寺、リボーンだけが残った。

疲れが出始めている綱吉に獄寺は休むように言うが、それを拒んだ。




目を閉じ、心の中で骸の名前をつぐんだ。









―――骸…早く帰って来て………































「っ!……また…?」


「どうしたの、骸クン」


「いえ…なんでも。(誰でしょうか…僕を呼んでいるのは……)」






骸はある程度回復して職に戻ることになった。


とはいえ、白蘭のそばで仕事の書類を突き出したり、逃げないようにするのが主なのだが。




記憶を消したものの、無意識にボンゴレの名前を出すときがある。

白蘭はいつ記憶が戻るか定かでない為、そばに置いているのだが…






のしっ

「骸クーン、ボクもう4時間も仕事しっぱなしなんだけど…」





大抵、骸に休憩をお願いしているのだ。

骸は溜息ひとつし、自分の背中に乗っかり、休憩をすがんで来る白蘭を引きずり、さっきまえ座っていたソファーに戻した。






「ちゃんと仕事してください。」


「えーー…だってつまんない…」


「マシュマロ禁止しますよ?」


「さあ!ボクがやるべき書類をじゃんじゃん持って来て!!」







ベシベシ!と机をたたき、やる気を出し始めた。

単純にもほどがある。







「白蘭様…仕事してますか?」


「正チャンも仕事しろしか言えないの!?たまには"お疲れでしょう?休憩してはいかがですか?"の一言くらい……」






部屋に入ってくるなりその言葉を口にする正一の手には大量の書類が積み重なっている。

そんなことしか言えないのだろうか。


ムッとした顔で白蘭が正一の方を向いて文句の一つ言おうとしたとき






「"一言くらい"…なんですか?万年サボリ野郎が。」


「ナ、ニ…その書類の量……」






黒い笑みを浮かべながら白蘭の前に紙の山をおろした。

冷や汗を垂らしている白蘭に容赦ない言葉で







「あなたがサボるからこういうことになるんですよ」


「〜〜〜〜〜っ!正チャンの鬼ーーー!!!!」


「鬼で結構です」


「ちょ、酷くない!?ねぇ、骸クン!!」








涙目になりながら骸の方を向く白蘭。


だが、骸を目にした途端、その先の言葉を失った。







「………骸、クン?」







呼びかける白蘭を一切無視する骸に、正一も骸の方を向いた。



よく見れば、肩で息をしている。

いつもと違う骸に異変を感じた正一は骸の名前を呼ぼうとした。







「どうかしたんですか?むく……」







骸君。

そう続こうとしたが、骸は書類を床に散らしてその上に倒れてしまった。



頭を抑え、眉間に皺を寄せている。

浅呼吸を繰り返し、うっすらと汗が浮かんでいた。




白蘭は突然倒れた骸に目を丸くしたが、ゆっくりと骸を抱き上げて自分が座っていたソファーに寝かせた。








「どうかしたんでしょうか?」


「うーん…どうなんだろうね。」






さらり、骸の髪を撫でている白蘭。


骸を見る正一は、記憶が戻るのではないか、と心配していた。







「んっ………し………綱…よ、し………」


「「!!」」







弱弱しく口ずさむ骸に白蘭は正一に気付かれない位の悲しい顔を見せた。




――ちがうよ、骸クン。君が呼ぶのは、ボクでしょ?








「やっと手に入れたんだ……」









そう言って骸の額にキスを落とした。









「ボンゴレなんかに返さないよ……骸クン。」












――君はボクのなんだから…









さぁ。早くボクの名前を呼んで?









END
09.02.19
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