彼がつくるものはいつも怪しい。
だから逃げて当たり前。
そして、今日も始まった。
「ぅおーーーーーー!!!来んなぁーーー!!(泣)」
「これを飲んでくれれば追いかけないさ」
しかし、今回は違った。
まさか、こんなことになるとは
誰も思っていなかったかもしれない・・・・・・・・
[怪しいクスリ]
事の始まりはこうだ。
「一護。これを飲んでくれないか??」
虚圏にいる黒崎一護。
藍染と同等な立場であるこの男だ。
平和に過ごしているのだが・・・・・藍染。
この男が、そんな平和な日常を壊してくのであった。
「あぁ?なんだそりゃ。」
藍染の手には小さなフラスコ。
うん、そこまではいい。
問題はその中身だ。
青いような、緑色のような・・・とにかく不気味な液体が入っている。
それを藍染は笑顔で一護に飲むように言うのだ。
正確には飲ませようとしている。
もちろん、そんなあやしい液体を簡単に飲むわけもない一護は
迫ってくる藍染に背を向けて走り出した。
そして冒頭に至る。
「誰がそんなあやしいもん飲むか!!」
「違うさ。あやしくなんてないとも。ただちょっとしたものだから☆」
「俺を殺す気か!?」
そのちょっとしたものというのが何なのか聞きたいところだが
笑顔で迫る男から逃げるのに必死になって、聞けるわけがない。
「死にはしないさ♪多分。
ザエルアポロに頼んで作ってもらった。危険はないと思うよ。多分」
「余計飲めるかーーー!!しかも多分ってなんだよ、多分って――!!!」
虚圏内を走り回り始め、一護に疲れが出始めた頃、チラリと後ろを振り向いてみた。
考えれば藍染は自分より年上。言ってしまえば体力はないはず。
これで逃げ切れるかも・・・なんて思い、期待を膨らませていた
「いーちごーーーーvVvV」
「・・・・・・・」
が、息を切らすどころか疲れを一切見せていない藍染の姿だった。
(ま、まじかよ・・・・)
振り向くんじゃなかった。
後悔しながら前を向くと、一人歩くウルキオラの後姿が見えた。
一護はうっすらと涙を浮かべながら、当然の如くウルキオラに助けを求めた。
「一護様・・と、藍染様?」
「ウルキオラ!!藍染が・・・虐める!!なんとかしてくれーー!!!1」
「あ、ウルキオラ、一護を支えなさい。おもしろいことが起きるからっ☆」
(・・・・キモッ)
「あはっ☆」と効果音でもつきそうな藍染にウルキオラは心底嫌そうな顔をした。
頂点に立つという男が辺りに花と星を散らしているその姿は、少し・・・いや、相当近寄りがたい。
一護が必死で逃げ回るのも頷けるだろう。
ウルキオラは向かってくる2人に溜息をつき、向かってくる一護を捕まえた。
「!!?? ウルキオラ!?」
「すみません、一護様。今回ばかりは捕まってください。
これ以上藍染様に暴れられてはこちらも困りますので・・・」
良くやった。と走りながら徐々に近づいてくる藍染を平然と対応しているウルキオラを尊敬しよう。
誰もこんな藍染を見たらこの人の下に就こうとは一人もいないかもしれない。いや、いないだろう。
現にこれまで藍染が一護に何かしようとしては失敗し、その怒りは破面たちにあたるのであった。
もちろん、市丸や東仙もその例外ではない。
「ぎゃー!!近づくなぁ!!」
「大丈夫だよ、きっと何でもないから。もし失敗だったらザエルアポロを半殺しにしておくさ。」
「その前にあんたに殺されそうだ!!」
抵抗も虚しく、藍染によって変な液体は飲まされてしまった一護だったのだ。
ハラハラと2人は一護を見守るが特に変化はなく、変ったことも無いようだった。
つまりザエルアポロが作った液体は失敗という事になる。
ガックリとした藍染は一変してスッと立ち上がった。
「・・・・(ザエルアポロを)シメてくる。」
どす黒いオーラを出してその場を去ってしまった。
きっと今日が彼の命日となるであろう。
そんな彼に合掌・・・・
「し、死ななくてよかった・・・」
「本当に何も変化ありませんか?」
「あぁ。・・・特に。」
走り回ったせいか、当分動く気にすらなれない。
というか、立ち上がるのも面倒になってきた一護はその場でウルキオラと話し始めた。
「あの液体は、どうでした??」
「ん?・・・あぁ、あんな色の割にはジュースの感覚。不味くはなかった。」
「そうですか・・・」
捕まえていた身ではあるが、流石に
“ザエルアポロが作ったクスリ”
という事に不安を感じ、一護の顔を覗くウルキオラ。
そんな心配もなさそうに一護は笑顔で何でもない。と、手をひらひらと振った。
ホッとしたのか、ウルキオラの罪悪感も少しは緩む。
空になったフラスコが地面に置かれているのに気付くと、まじまじとそれを見てみるが・・・
やはり色は最悪だ。
何故ここまで必死になってまで飲ませようとするのか不思議なものだ。
藍染は破面を作っているのだろうか。いや、それ以前に仕事をしているのであろうか。
フラスコを見ると色々な考えが浮かぶ。
「なんだ?お前も飲みたかっ「遠慮します。」
フラスコから目をそらし、一護の言葉を遮ってまで拒否した。
それほどまで不気味なものなのだ。
一方、藍染はというと、ザエルアポロを自分の元に来るように呼んだ。
あれほどの追いかけっこをしておきながら何も起こらないという事に相当ご立腹のようだ。
戻る間、破面が数人すれ違ったが、不機嫌オーラに全員距離を置いている。
藍染を中心に半径数メートルには誰も近寄れないのだ。
自分の椅子に座り、ザエルアポロが来るのを待つ。
「なんや、不機嫌ですなぁ。」
「・・・・・ギン。」
壁に寄りかかって少し口の端をあげている。
もちろんいつもより藍染とは距離がある。
いつ自分にあたるかわかったものではない。
それをきちんと理解している。
「失礼します。お呼びですか、藍染様」
あくまでいつものように振舞う彼、ザエルアポロ。
彼も藍染の不機嫌には扉を開ける前からヒシヒシと感じ取れた。
現にこれ以上近づけない。
これ以上近づけば殺されそうだ。
見えない境界線がそれを語る。
「なんで、呼ばれたか・・・・・わかるか?」
「クスリの件・・・・ですか?」
「そうだよ。・・・・何も起きなかったのだが?
追いかけっこまでしてやっと飲ませられたのに・・・・・・」
イライラ度はMAX。
この距離でもわかる藍染の殺気。
ザエルアポロもドアに背を当てながらも尚笑顔で対応する。
「藍染様。説明は最後まで聞いてから一護様の元まで走ってください。」
「・・・・は?」
「あれは即効性ではありません。
クスリが効くまで時間がかかります。ですから・・・・」
バァン!!
「ブェッ」
「藍染様!!!」
・・・・・・説明しよう。
藍染に解説をしていたザエルアポロは背後の扉が思い切り開けられた為、
ドアと壁に挟まってしまい、変な声をあげてしまったのだ。
かけていたメガネは無残に割れ、
口元から少し血が流れつつもヨロヨロとドアと壁の間から出てきた。
乱暴に開けられたドア。
荒さからしてノイトラやグリムジョーが浮かぶが、声からしてそいつらではないようだ。
近くにいる市丸は肩を震わせて笑いを堪えているのが見える。
「ウルキオラ。どうした、君がそんなに慌てるとは・・・・」
「藍染様。い、い、一護様が・・・」
と、差し出してきたのはやちる程の背丈の小さな子供。
此処には居るはずもない人間の子供だ。
しかし、オレンジ色の髪が彼、一護だと判明させてくれる。
その場の空気が一瞬止まった。
「えっと・・・・・これが一護かい?ウルキオラ」
「はい。突然こんなお姿に・・・・」
「ク・・クスリの、成果・・・・です。」
弱々しく発言するザエルアポロに視線が向く。
眼鏡が割れているが、何とも勝ち誇ったような顔だ。
今回一護が飲んだ飲まされたクスリとは、このことらしい。
「居たのか、ザエルアポロ。・・・そんな所で何をしている」
「お前のせいだろうが・・・・」
「はぁ。バカも休み休みにしろ」
呆れたウルキオラは文句を言ってくるザエルアポロを無視に決め、藍染に話を進めた。
どうやら小さくなった分、精神、体力も全て体に合ったものになっているらしい。
足もとにいる一護に視線を向けながら説明を続けた。
「我々の名前も覚えていないみたいなんですが、どう、い・・・・・た・・・・・・・・・・・・」
ふと、藍染に視線を向ければ、先ほどまでの殺気はどこへやら・・・
藍染の周りには花が咲き誇っていた。
あまりの事にウルキオラの話も止まってしまう。
「あ・・藍染様・・・・?」
「ん?あぁ。じゃぁ、君が世話をしてくれ、ウルキオラ。」
「・・・承知いたしました。」
「あ、わかっているとは思うけど、く・れ・ぐ・れ・も一護に手を出さないでくれよ。」
「(そんなん、あんただけだ・・・)・・・・・承知しております。」
染に一礼し、足もとにいる一護を踏まないように歩きだした。
ウルキオラが歩きだしたのと同時に一護の後ろについて歩く。
それを見えなくなるまで残った3人が(正確には1人が鼻血を垂らしながら)見ていた事を記しておこう。
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