に 咲 く の 下 で
















「なぁウルキオラー」







いつもの如く、ベッドにゴロリと横になっている一護は黙々と本を読んでいるウルキオラに声をかけた。


ウルキオラは一度目を閉じながら、小さなため息を零す。

本は閉じられ、本に向けられていたウルキオラの目はゆっくりと一護へと移動した。






「はい、何でしょうか」


「ひまー…」







構って欲しいと言わんばかりの表情をウルキオラに向けた。

眉尻を下げて子犬を思わせる。というよりか幻覚で垂れ下がった耳が今にも見えそうだ。



ベッドから、するり、と降りてウルキオラの膝の上に転がった。









「ひ、暇と言われましても…」


「なんか楽しいことねぇかなー…」









口を尖らせてブーブー文句をいってみる。

ウルキオラに言っても困らせているだけなのは百も承知な一護だが、口に出さずにいられないようだ。










「とうしろーの所行くに行けないし…」


「……何故です?」









遊び相手である日番谷の所に行くに行けないらしい一護に疑問を持つのは当然だと言えるだろう。

何時もなら"遊びに行ってくる!"の一言、満面の笑顔をウルキオラにふりかけて行くのだが。







「えっと………」








考え込み始めた一護にウルキオラは首を傾げた。




説明に困っている一護だが、

数秒後、顔を真っ赤にして下を向いて顔を隠した。


きっと頭の中で言いたいことを整理していたんだろう。

耳まで真っ赤な一護に疑問をもったウルキオラは覗き込んでみる。







「…一護様?」

「っ!………うぅ////」

「………(ま、まさか…見てしまったんですか!?)」






一護の様子で察したらしい。

ウルキオラの頭の回転の良さだからこそわかったんだろう。




ウルキオラの頭の中では…


日番谷様の所に行けない。つまり、行ったけど戻って来てしまった。

それか市丸様に「ふゆを独り占めしたからアカン!」なんて言われたから。






市丸様に言われても一護様は屈しないから却下。

一護様が言うのを躊躇う程の恥ずかしいこと。









そして今のこの表情……









「(真昼間から何やってるんですか市丸様あぁぁぁぁぁ!!!!!!)」











うぅ、と唸りながらウルキオラの服に顔を擦り寄せた。

いつもヘラッとしている一護だが、こうも大人しく…しかも顔を赤くしているのは刺激的で。






「(鼻血でそう…)」






ウルキオラは手で鼻を覆って視線を逸らした。

理性があるうちに納めないと何をするかわからないと判断したのか、ウルキオラは理性あるうちに一護を離すことにした。

しかし、ピッタリとくっついている一護を無理矢理剥がすのも気が引けるため、一護が離してくれるまで待つことに決めて。




一護の頭をそっと撫でて落ち着かせてみる。

以前読んだ本に"子供をあやす場合、頭を撫でるとよい"なんて書いてあったのを思い出したんだろう。

確かに子供だが、あやす理由が違うというのはあえて無視しよう。

それにしても、市丸の大胆な行動には驚かされる。

誰が真昼間からヤるものがいるだろうか。いや、市丸というやつがいるのだが…








(いくら日番谷様が好きだからとはいえ、少しは自重して欲しいものだ。)








はぁ、ため息ひとつ。

気がつけばいつの間にか眠っている一護に手を止めた。

起こさないようにゆっくりと抱き上げてベッドに戻す。




立ち上がって向かう場所は、市丸の所。










まったく…市丸様は。

尸魂界でもサボり魔だと聞いていたが、最近の市丸様は職を失ったサラリーマンのように何もやりゃしない。



藍染様でさえ最近は一護様のグッズを無くしてから真面目に仕事を(泣く泣く)やっているというのに…!








「ちょっとウルキオラ!」








声のキーが高い。

超音波のようなロリの声に眉がよる。

無視して歩いて行ってもいいのだが、何時までも俺の名前を言いそうで、仕方なく足を止めて顔を少しだけ向けた。







「……なんの用だ」


「今夜。現世でこんなのやるらしいの。
だから前もって藍染様に現世許可取りなさい!あ、この紙はあげるから。」







俺が口を挟む暇すらなく、言うだけ言って去って行った。



無理矢理渡された紙には今日の日付、時間が。

そして大きい文字で"花火大会"と書かれている。

あいつのあの様子から見るとまた何か繕っているんだろう。



毎回毎回懲りずに繕うものだ。








「………」








ちょうど一護様も暇と言っていることだ、連れていくには良い場所だろう。


そう考えを巡らせていると、市丸様の宮に着いた。いや、着いてしまった。









コン
   コン

「……………………」








寝ているのか。


全く出て来る様子がない。中に霊圧が2つ感じるからいるはずなのだが…









ギィ……


「誰やぁ?」






さほど重くない扉を重々しく押されて開かれる。








「……!」

「なんや、ウルキオラやない
バタン!!







市丸様に文句の一つでも言おうと決してきた。

だが、まさかこの昼間、この時間に上半身裸って…!?



まさかまたヤってたのか!?ヤってたんだな!!










ギィ…


「なにすんねん。いきなり閉めるから鼻ぶつけてしもた。


ふゆー!ふゆー!ボク鼻血でてへん?」




「それより上を着て下さい。」










俺の言葉なんか耳に入れず、部屋の奥にいる日番谷様の元へ行ってしまった。











「ふゆーボクの鼻見てくれへん?鼻血でてへん?」









ベッドに横になっている日番谷は眉を寄せながら瞼をこすって開かれる瞳は市丸を写す。

まだ寝ぼけているのかうつらうつらとした表情。

のびた手は市丸の頬を撫でるように滑り、市丸の手を掴んでおろす。










「……ねぇ、よ」


「ほんま?」


「あぁ。」








あくび一つ、むくりと起き上がった。

腰が痛いのか日番谷の手は腰にあてられ、小さくうずくまる。









「あーふゆ、寝ててえーよ」


「…大丈夫だ。」








シーツを頭からかぶり、全身を白いシーツで体を覆う。



シーツ以外何も身に付けていない為、それをずるずると引きずってベッドから降りると、

ドアの所に感じる気配が一つ。




ピタリ、日番谷の足は止まってそちらに向けると、目を丸くしているウルキオラがそこにいた。


まずウルキオラを見て数十秒。













「…………日番谷様…」












そう言われてまた数十秒。













「ふゆー。服はあっちやでー」












と言われてやっと理解したのか顔を真っ赤にしてずるずるとシーツを引きずって服のある奥に消えて行った。













「かわええなあ…」


「はぁ…そういうのは夜にやってください。」


「何言ってるん、もちろん夜もやっとるわ。」


「(夜以外は自重しろってんだキツネめ!!)………」


「ふゆはなー。3食のご飯と同じなんやーv朝・昼・夜は絶対やでー」








うふふー

と気持ち悪い笑みをウルキオラに向けてデレデレしている市丸。


と、ウルキオラの持つ紙が目に入ったのか、ウルキオラの手から抜き取った。











「なんや、これ…」


「現世で行われる花火大会です。また衣類でも繕っているのでしょう…」



「……ふふふ…ええこと思いついた☆

ボク達もコレいくわ。」



「………は?」










行くも何も言っていないウルキオラに対して既に行く気マンマンの市丸。

まあ、一護が行かないというはずもなく、行くというに決まっているから別にいくだろうが。




数時間後、ウルキオラの宮と市丸の宮には色鮮やかな浴衣が届けられた。




























「おぉ!花火!!」


「はい。ですので…現世に行きませんか?」


「行きたい行きたい!!」








前もって藍染に許可を取っておいたウルキオラは盛大な溜息を零した。

藍染に許可をもらうのにどんなに苦労したものか…。



スゴイ表情…今にも泣きそうな(いや、涙っぽいのは見えていた)顔をウルキオラと市丸に向けていた。

額に巻かれていたハチマキには"奪還!私の一護グッズ達"なんて書かれていた。




一方市丸は日番谷との現世デートができることに辺りに花を散らしている。

藍染の愚痴など一言も耳に入らず、正式な許可で出る前に藍染にお留守番を頼んでいた。








「……はぁ。」








思い出すだけで嫌になりそうだった藍染の嘆き。

そんなウルキオラの宮で喜んでいる一護に届けられたのは1セットの浴衣だった。



後でロリ達が着替えをさせに来るらしいことを一護にきいて。

死覇装とは違うので着ることができない一護は花火のチラシを見て微笑んでいた。









「なぁなぁ。ウルキオラは花火見たことあんのか?」


「いえ、知識だけです」


「すっげーキレイなんだぜ!!」








満面の笑みにぐっときたウルキオラ。

耐えろ、と自分に言い聞かせて同意の言葉を出すのには時間がかかった。



目を輝かせている一護はウルキオラが座っているベッドの上に乗っかって、膝の上でばたつかせる。









「ウルキオラと花火かー…楽しみだな♪」


「無自覚とは      …」


「?なんか言ったか?」


「いえ、何でもありません。」












*******








「着付け?」


「うん、ボクわからんもん。せやからロリに着つけてもらおと思てな。」


「オレまた女装!?」







青ざめる日番谷は浴衣に目が行く。

思ったとおり色鮮やかなそれは黒でもネイビーでもないが







「でもこの浴衣水色やし、男ものやん♪(完全に女物や)」


「あ、ほんとだ…良かった……」








色で判断。

すんなり納得する日番谷。







「さぁ日番谷様、ちゃっちゃと着替えましょう☆(この後一護様の着付けが待ってるんですから♪)」







着々と市丸の前で着替えは始まり、浴衣を着つけられていく日番谷。

死覇装とは違ってゆとりのない歩幅。

しめつけられるような腹部。

唯一変わらないのは袖くらいだろう。







「なぁ…浴衣ってこんな堅苦しいモンだったか?帯ももっと細いんじゃ…」


「現世の流行なんです!」


「流行…(にしては市丸は普通なんだな)」


「はい!流行に乗れないと恥かきますよ?」


「(恥をかいてもいいから市丸と同じがいい…)」





「あ、それと…この後一護様と記念撮影しますから着崩れしないように。

市丸様もそれまで日番谷様へのおさわり禁止ですよ!!?」




「はぁ!?記念撮影!?」

「触っちゃあかんの!?」







下駄を置いていき、颯爽と去って行ったロリ達に溜息を着いた。





動くに動けない日番谷はベッドに腰をかけ、ふぅと一息ついた。

市丸は市丸で今にでも抱きつきたい衝動をぐっと堪えて日番谷を見ている。


袖をいじっている日番谷は少し下を向いて浴衣をまじまじと見ているが、市丸からしてみれば拷問にすぎない。




下を向いているせいでうなじは髪を滑らせて肌が見えてくる。

うずうずする気持ちを抑えるのに苦労している市丸は、一護が来るまで続くのであった。
























「一護様、失礼します!!」







ノックを忘れて飛び入ってきたのはロリと後ろでヒーヒーと息を切らしているメノリだ。

一応言っておくが、ここの宮はあくまでウルキオラの宮であることを忘れてはいけない。









「さあ一護様、着替えますよ!!」


「とうしろーは終わったのか?」



「はい。待って頂いております。
市丸様にも一護様と記念撮影までおさわり禁止と言っておきました!」








哀れな市丸だが、着崩れしたら誰が正さなければならないのかわかって欲しい。

メノリは、着付けをしているロリの手伝いをしてなんとか一護の浴衣を着せていく。





もちろん、女ものだ。


色鮮やかな生地が一護の肌と合っている。

ちゃんとわかっているのが、流石腐った乙女と言えよう。




ウルキオラは一護の着つけが終わるまで見守りつづける。










「ふー……さあ、一護様後はエクステ付けて終了です☆」


「あと少しですので辛抱を。」


「むー…」







ずっと立ちっぱなしの一護はさっさと動きたくて仕方がない様子。

ちらり、ウルキオラに視線を向けるが、傍観しているだけで。

動く様子もない所から助け舟はなさそうだ。



ロリとメノリは着々とエクステを付けていく。

できあがった一護は髪が長くなり、ロリはその髪を結え始めた。









「なあロリー…髪が痛えんだけど…」


「大丈夫です、一護様!抜けたりしませんから♪」


「うー…(そういう問題じゃないんだけどなあー)」









ご丁寧に飾りまで付け、やっと浴衣仕様の一護が完成した。

ロリ、メノリはご満悦のようで、一護を市丸の宮に連れていこうと手をつかんだ。

そんなことを知らないウルキオラはロリにどこに連れていく気か問う。



当然の如く、市丸の所で待機している日番谷と記念撮影を撮ることを言えば、ウルキオラから盛大な溜息がこぼれた。


一護はロリと手を繋いで…というよりもロリに引っ張られる状態で進んでいる。

見かねたウルキオラはロリから一護の手を離した。









「一護様が歩きにくいようだ。お前が引っ張っていては一護様が辛いだろう」


「……ロリは先に行っててくれ!オレ、なるべく早くとーしろーんとこ行くからさ!」


「わかりましたvでは先に行って準備して待ってますね☆」







一護をウルキオラにまかせて風のように走り去っていった。

ウルキオラは一護の歩幅に合わせて、転ばないように手をつないで市丸の宮を目指した。





















☆中編へ☆




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